ぐーぐーぐー。
…あの、雲太郎さん?
ぐーぐーぐーぐー。
雲太郎さーん? おーい!
ぐーぐーぐーぐーぐー。
くーもーたーろーうさーん!
…むにゃ~。なんだよ急に大声を出しよってからに。
なんだよ、じゃないですよ。お客さんがみえましたよ。
ああお客さんか…おやすみ。
何で寝ちゃうんですかー! お客さんだって言ってるじゃないですかー。
テイコ、前も言ったが、近所の悪ガキが「お前んちおばけ屋敷ー!」って叫んで逃げるのはお客さんじゃないからな。
違いますよ! れっきとした本物のお客さんですよ!
えっ? 嘘?
ほんとですよー。ほらー。
……!!!
はっはっはっ、よくきたね。私がここのオーナーの雲太郎だ。以後お見知りおきを。
あの、さっきまで大いびきで寝てたんですから、よだれはちゃんとふいてくださいよ。
なに、ここはどこだって? よくぞ聞いてくれた。ここはインターネット黎明期、ネット上に多数登場した、 個人サイトの魅力、美術性、創造性を後世に遺していくための個人サイト保存委員会だっ!!!!
はあ、また大風呂敷広げましたねー。
時に客人、個人サイトはご存じかね。もっともうちの門をくぐったそなたであれば愚問かもしれないが。
…雲太郎さん、そろそろその上から目線はやめた方が良いですよ。お客さん怒って帰っちゃいますよ。
ぬう、ちょっと遊んでみただけじゃないかー。
こちらはですね、インターネットが普及し始め、個人からの発信が可能になり、数多く作成された個人サイトですが、 これらはただ機械的に作ったわけではない、作り手の思いや考えが込められた創作物とみなし、 後世に遺していくための保存委員会なのです。
創作物というのが大きなポイントなのよ。
文学作品や美術作品、出版物などといった物は美術館や図書館などで大切に保管されているものだけど、
同じ人の作り出した個人サイトというのは、あまりそういう扱いはされないと。
これは私としては非常にもったいなく感じるのですよ。
私はこれを保存していくことに、大きな意味があると確信して、こういう委員会を設立したわけです。
所長、個人サイトの定義も説明しないと。
そうさねえ。その辺はっきりさせないとね。
定義といってもふわふわした物で、どこで線引きするかってことだけど…
だけど?
…いろいろ考えたんだけど結構難しいんだよ。
何をもって「個人サイト」とするか、というのが決めるのは難しい。
ええー! 決めてないんですか!
なんだろ、ブログってあるじゃない。あとWikipediaなどのCMS。
ああいうのは、各サイトを運営している人が全部管理している、ってわけじゃないでしょ。
ある程度デザインは決められても、全体を決めるなどしてるわけじゃないでしょ。
そうですね。
だからそういうのは創作性が低いとみなして除外すれば良いと思うんだよ。
サイト管理する人が、自分でコードを書くなり、サイト作成ソフトを使うなりで、
多少なりとも作り手の創意工夫が込められている物、ということにしました。
また「個人」という名前はついてるけど、ある団体に属するメンバーがその団体のサイトを作った、
という場合も含めることにします。
創意工夫、が肝心なんですか。
つまるところ、そうかもしれないね。
文学作品でもなんでも、創意工夫なしには作れない物だから。
じゃあこれからその、創意工夫をキーワードにしていきますか。
うん、そうしようか。
…なんか、軽いですね。
うへへへへ。